<お母さんからの質問> 小学校一年生の兄の学校行しぶりに対して、「お風呂で一対一の時間をつくることと、『ありがとう』と口にする機会を増やすこと」という多賀先生の前回の回答通りにしてみました。 確かに、行しぶりは軽くなりましたが、抱っこが多くなり、オッパイを触ったり、赤ちゃん言葉を使ったりするようになりました。このまま続けて大丈夫でしょうか? (6歳息子と1歳息子のママ) <多賀先生のアドバイス> 甘え直しの状態になっただけですから大丈夫です。 もう卒業したはずの抱っこやオッパイをせがんだり、赤ちゃん言葉が自宅で出たりしていても、学校や友達の前では出ていないでしょう。 つまり、本人の意識の中に、これは自分のような年齢の子がすることではない、お兄ちゃんとしてふさわしくないという気持ちがあるからです。 お母さんに甘えるのを弟がいるために我慢してきたので、ここで一気に補充しようとするもので、甘え直しと言います。 お母さんが感じている以上に、子どもたちは我慢しているのです。 「アイデンティティー(自己同一性)」という言葉を提唱したアメリカ人の発達心理学者E・H・エリクソンは「人間には発達段階があり、おのおののステージに獲得しなければならない項目がある、それを満たさずに次の段階に上がることはできない」と言っています。 つまり、乳児期に基本的信頼関係を十分に獲得しておかないと、自立性を培う幼児期や自主性を培う児童期にスムーズに移行しないということです。 基本的信頼関係とは母子関係の安定です。 甘え直しというのは、お母さんが意識して急速充電してあげれば、本来のステージに戻りますから安心してください。 〔北陸中日新聞 令和3年6月17日掲載〕 |