<お母さんからの質問> 前回に「思春期に『クソばばぁ』と言ったりするのは当たり前」と回答していましたが、息子は私に対して、そのような汚い言葉を発したことがありませんし、荒れた時期もありませんでした。 それはそれで自立してないのではないかと心配になるのですが (22歳の息子を持つお母さん) <多賀先生のアドバイス> 思春期の荒れはあったらあったで苦労しますし、なかったらなかったで心配しますね。親って大変です。 現在、大学または社会で人間関係を構築できているのでしたら、心配いりません。 お母さんが気づかなかっただけで、お子さんに思春期はあったのです。 以前に、私の兄と兄の息子と私の三人で話していた時、兄が息子に対して「おまえは思春期の荒れがほとんどなかったよなぁ」と言いました。 すると、彼は小さな声で「お父さんが知らないだけだよ」と。 そうなんです、親が子どものこと、特に心理的なことまで全て知っていると考えるのは、おこがましいのです。 思春期は親に反発することと、友人に自己投影することによって、自分のアイデンティティーを確認・確立する時期です。 アイデンティティーとは難しいことではなく、自分は何が好きで何が嫌いか、自分は何に興味があるか、自分がどういう人間であるかを知ることであり、それらが親と同じではないと知ることです。 アイデンティティーが確立できないままだと、自分自身を保持・擁護できないので、人間関係で周りに合わせることばかりになってしまい、自分を見失い、不安定になります。 〔北陸中日新聞 令和3年9月23日掲載〕 |